パナマの貧困地区からボクサーになり、チョロと呼ばれた世界チャンピオンがいました。
彼はのちに石の拳という伝説を作ったボクサー、ロベルト・デュランです。
1950年代初頭のアメリカは、NYを中心としたボクシング興行から全米域に広がっていく時期でした。
当時18人の世界王者を育てた名トレーナー:レイ・アーセルは、テレビ出演にも紳士に対応してアメリカ全エリアに興行が広がっていくことに貢献している人物でした。
アメリカでのボクシング興行を半ば独占していたNYマフィアにとっては現状が面白く無い。
そういった経緯から、テレビに出てボクシングを国民的スポーツに広げていくレイのことを執拗に追い回してくことになる。
レイは言う。
私がテレビに出ることは、結果、回り回って君たちに利益をもたらすことになるのだと。
NYマフィアは返す。
そんなことはどうでもいいから今すぐ手を引けと。
全てに俺たちを通せと。
レイと共にデュランは戦うが、それは、生まれた境遇と戦い、通じない理不尽と戦い、時代と戦い、国家の翻弄と戦い、ということではない。何よりも、「それが自分だから」という当たり前の欲求のまま、デュランはレナードとの戦いに身を投じていく。
レイはNYマフィアに言う。
デュランに賭けろと。大儲けさせてやると。
デュランが負けたら俺を撃ち殺せばいいと。
彼はそう笑って19人目の世界チャンプを育てていく。
命を賭ける覚悟の凄さがあった話というより、
現代よりももっと死が身近にあった時代・場所に生まれたから、ただそう生きた、という至極当然のことを突きつけられた気がした映画でした。
つまり、「天然」の状態でハードボイルドであると。
結局、覚悟とか抗う、というのは比較材料があるから「そうじゃない」と抗うのであって、まだ現代が訪れていない過去の時代に在っては、それが普通に当たり前だった。ということで、
至極真っ当に受け入れている登場人物たちの演技・演出に魅力を感じた映画でした。
ちなみに名トレーナー:レイ・アーセル役はロバートデニーロです。
投稿者:ボーカル部長